台風が近づくと、本土の知人から「大丈夫?」とLINEが届く。 ありがたい話だが、メッセージを既読にしているその時間、沖縄県民の私はバスタブに向かってシャワーノズルを突っ込んでいる。 これは比喩でも溜まった家事でもなく、台風前の標準動作である。
本記事は、沖縄に生まれて30年以上、台風と共に暮らしてきた私が、台風直撃前に必ずやっている7つのことをまとめたものだ。 近年は台風被害圏が九州・四国・関東にまで拡大している。沖縄県民以外の皆さんも、ぜひブクマ推奨である。
📋 本記事のサマリ
① バスタブに水を貯める ② スマホ&モバイルバッテリー満充電 ③ 飲料水・カップ麺・お菓子を3日分 ④ オール電化勢はガスコンロ ⑤ 電力会社の停電情報サイトをブクマ ⑥ 車のガソリン満タン ⑦ 電気を使わない遊びグッズ(ナンジャモンジャ推奨)
①バスタブに水を貯める ─ 最初にやる「儀式」
台風前にまずやることは、バスタブに水を満タンに貯めることだ。 理由は単純で、停電するとマンションの給水ポンプが止まり、断水するからである。
中層マンション以上にお住まいの方、特にご注意いただきたい。 あなたの家の蛇口から出る水は、屋上のタンクからポンプで上がってきている。電気が止まれば、当然タンクへの水も止まる。タンクが空になった瞬間、シャワーもトイレも洗面台も「無」になる。
バスタブ満タン(約200L)あれば、トイレを流す・手を洗う・食器を流す、といった生活用水で半日〜1日は持ちこたえられる。 ちなみに飲料水ではない(重要)。飲料水は別途③で確保する。
我が家のバスタブ満タン担当は、4歳の息子である。 蛇口を捻る→居間に戻る→捻ったことを忘れる→水が溢れる。までがデフォルト。 水を貯めた結果、先に床を拭く羽目になった私は、何のために備えていたのかよく分からなかった。
②スマホとモバイルバッテリーは満充電 ─ 命綱
台風直撃中、家族と連絡を取る/停電復旧見込みを調べる、唯一の窓口がスマホである。 当然ながら、停電中はスマホも充電できない。
なので、台風が来る前にスマホ満充電+モバイルバッテリーも満充電にしておく。 モバイルバッテリーは1台では足りない。長期化に備えて2台あるとベスト。 最近はLEDライト付きの大容量タイプが2,000円台から手に入る。停電中の照明にもなるので、ここはケチらず買い足したい。
ついでに言うと、ノートPCも満充電にしておくと、これも巨大なモバイルバッテリーとして使える。家族のスマホ複数台をUSB-C経由で延命できる。在宅勤務勢の隠れた台風対策である。
③飲料水・カップ麺・お菓子は3日分 ─ 「水と糖分」で耐える
スーパーの棚が空になる前に、最低3日分の備蓄を済ませる。
- 飲料水:1人あたり1日2Lで、家族×2日分(4人家族なら16L、2Lペットボトル8本)
- カップ麺:水とガス(後述の④)さえあれば作れる、最強の保存食
- お菓子:これは保存食というより、子供の精神安定剤である
真面目に書くが、停電中の薄暗い部屋で泣き出す5歳児を泣き止ませる手段は、果汁グミブドウ味以外に存在しない。 0歳児には粉ミルクとオムツの予備も必須。これを忘れる父親はもれなく妻に役立たず認定される。
④オール電化勢はガスコンロを買え ─ 火が使えるだけで生活水準が3段上がる
近年、沖縄の新築マンションはオール電化が増えた。 停電するとIHが息絶え、お湯すら沸かせなくなる。
そこで、カセットコンロとガスボンベ(最低3本)を常備する。 水が沸かせるだけで、カップ麺・粉ミルク・コーヒーと生活水準が3段階くらい上がる。 ホームセンターで本体2,000円台、ガスボンベは3本セットで500円程度。投資効率が異常に高い。
ガス併用住宅の方は、もちろん何もしなくていい。今この瞬間にガスをありがたく思っていただきたい。
⑤沖縄電力の停電情報サイトを今すぐブクマ ─ 字丁目単位で復旧見込みが出る
停電したら、まずやることは沖縄電力の停電情報サイトを開くことだ。 近年、各電力会社の停電情報発信は劇的に進化している。
特に我が地元、沖縄電力は、字丁目単位で復旧見込みを発信している。 「うちの地区、あと2時間か」と分かるだけで、夫婦間の空気は劇的に良くなる。 本土の方も、お住まいのエリアの電力会社の停電情報URLは今すぐブクマしておくべきだ。台風が近づいてから検索しても、回線が混んで開けないことがある。
⑥車のガソリンは満タンに ─ 「クーラー避難所」と「重し」の二刀流
意外と見落とされがちなのが、車のガソリン満タンである。 理由は2つある。
1. 停電が長引いた時、車のクーラーが避難所になる 沖縄の停電は夏が多い。クーラーが止まった部屋は、3時間でサウナになる。 そこでエンジンをかけて窓を少し開け、車内でクーラーを浴びる時間を作る。 特に乳幼児や高齢者がいる家庭は、これで命が救われると言っても大げさではない。 (ただし換気には十分注意のこと)
2. 重くしておくと飛びにくい 至って真面目に書いている。台風で軽自動車が動いたという話を、何度も聞いている。
ガソリンスタンドは台風直前に大行列ができる。(台風直後は洗車でその2倍の行列ができるが。)台風進路の確認は前々日にやっておきたい。
⑦停電中の子供の暇つぶし ─ なんじゃもんじゃが最強な理由
ここが本記事のラスボスである。
停電中、最も手強い敵は何か。 暴風雨でも、断水でも、暑さでもない。 子供の退屈である。
Amazon Prime、Netflix、YouTube、Switch、iPad。これらは停電前に等しく「無」になる。 そこで、電気を使わず、子供と延々遊べる何かが要る。
私が体験談としてガチでおすすめするのが、カードゲーム「ナンジャモンジャ」である。 推す理由は2つ。
理由1:ルールが極端に簡単で、3歳から大人まで同じ卓で遊べる
ルールはこれだけ。
カードに描かれた謎の生き物に、各プレイヤーが好きな名前をつける。 同じ生き物が再登場したら、その名前を最初に叫んだ人がカードをもらえる。
文字も計算も要らない。3歳児と祖父母が真剣に勝負できるボードゲームは、実はほとんど存在しない。 ここが最も支配的な強みである。 台風で家に閉じこもると、普段は子供だけで遊ばせている時間も含めて、全員で過ごすことになる。世代横断で遊べるゲームのありがたみが、こういう時に分かる。
理由2:台風という事象とのマッチング精度が異常に高い
- 電気不要(最重要)
- 1ゲーム5〜10分の短時間ループで、何時間でも持つ
- 「大声で名前を叫ぶゲーム」なので、外で吹き荒れる暴風雨の音に負けず、家の中の不安を勝手にかき消してくれる
- カードゲームなので、ランタン1個で薄暗い部屋でも成立する
つまり、停電中の家族の空気を守るために設計された……わけではないのだろうが、結果的にそうなっている。 我が家では、台風6号襲来の間、息子と私と妻が「メイクアップが大好きなナリナちゃん」と叫び続けた。(誰) あの時間だけ、台風はちょっと楽しいイベントだった。 妻は「もう寝よう」と言っていた。
まとめ
台風と共に暮らしてきた沖縄県民が教える、台風前の事前準備7選。 天災は避けられなくても、影響は最小限にできる。 沖縄以外の皆さんもぜひ参考に。
……と、いかにも経験者っぽく書き連ねたが、白状すると私自身、息子が生まれるまで台風前の準備といえば「コンビニで缶ビール」だけだった。 バスタブに水を貯めるという発想は、停電→断水で2日間トイレが流せず、妻に「次は、私が貯める」と静かに言われてから定着したものである。
私の本当の備えは、知識でも防災グッズでもなく、妻の三行半である。
(次の台風までに、もう1本モバイルバッテリーを買いに行く)


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